産直とは(消費者サイド)
おそらく広く一般的に知られている産直は、この2種類。
①JA(農協)
②一般企業
各都道府県の地域で異なるが、おおむねJAが運営している産直(産直市)が多いようです。そのほか、商工会や漁協、何組か農家が集まって、まれに個人事業主の方がその地域で開いてもいます。
産直市のイメージはおおむね、
①新鮮な野菜が低価格で販売されている
②その地域特産の作物が販売されている
③その地域でしか見たことがない作物がある
④その地域の物産も販売している
だと思う。このイメージは私たちが都内に在住している時の産直市に対して抱いていたもの。
現在は、生産者として産直に出荷しているし、上記のイメージ+αで日常的に利用しています。
私たちはスーパーに買い物に行くような感覚で産直に来店しているのですが、専ら下記の理由からです。
①知り合いやお気に入りの農家さんが販売している作物や加工品があるので購入したいから
②肉や魚も販売コーナーも充実しているから
③野菜や魚の旬が分かる(むしろ旬の野菜しか並ばないから食べようってなる)から
地元の人も産直を利用しているので、ある程度の調味料や粉類、乳製品等も販売されています。出荷に来て、ついでに買い物して(スーパー代わりに)利用する方もいるようです。ちなみに私もそうです。もちろんスーパーにも行く!
利用している頻度や、産直がある地域に住んでいるかによってイメージは変わりますが、地産地消というのも大きなキーワードのようです。日ごろから産直市を利用しすぎていて、地産地消を忘れがちな私たちです笑
フツーに、意識せずに地産の野菜買っちゃってる…
産直とは(経営者サイド)
私たちはJA運営と、一般企業が運営敷いている2つの産直を利用していますが、どちらとも以下のような流れで出荷しています。
作物を収穫する
↓
袋詰めする
↓
産直に出荷しに行く
↓
値段を決めて、値札を貼る(産直に設置されているPCとプリンターを利用する。値札には、作物名と生産者名が明記される)
↓
各コーナーに陳列する(生産者によってはPOPを設置する、うちはPOP設置してる)
↓
閉店した後、売れ残った商品を引き上げる
↓
翌朝、また上記の流れで出荷する
私たちが生産している作物は柑橘なので、野菜のように毎日引き上げるという決まりはなく、決められた曜日 (2,3日間隔くらい) で引き上げて、翌朝また出荷します。
産直の経営者側としては、こうやって生産者が出荷に来て、陳列まで行い、余ったものは自分たちで引き上げる委託販売という形をとることで、在庫を抱えるというリスクが低くなります。在庫を抱えないということは、商品を棚に陳列させるために、商品を買うというコストを削減することにもなり、継続して運営がしやすいのです。
確かに在庫を抱える分、売れなかった時は廃棄するしかなく、かけたコスト分を損したことになりますよね。そういう経営する上でのロスを減らすことにつながっています。
経営側は、もちろん陳列された商品の管理をしてくれます。売り場が乱れていたら整頓するし、鮮度が悪くなった野菜や果物があれば、定期的にチェックして売り場から下げてくれます。下げた商品には理由を明記したメモを張り付けて所定の場所に保管してくれます。もちろん、そういった管理と陳列する棚の場所代として、販売が成立した商品に関しては、15%~25%ほど手数料として売上から引かれます。そのほか、JAの場合は産直に参加するためにJAバンクの口座を開いたり、出資金が必要になったりします。こういった、販売手数料や登録料に関しては、産直それぞれ異なります。
なぜ、産直を利用するのか
生産者が自ら産直に行って、各種作業をするのは想像する以上に手間がかかります。自分で値段をつけられるというのは魅力でもありますが、生産者側には市場に出荷するよりも作業的には負担がかかります。ではなぜ、産直を利用しているのか?主な理由は6つあります。
①作物の収穫量が少なく、市場に流通できない(温州みかんの場合、基本的には1回の出荷につき100箱以上の出荷が好ましいとされている)
②市場に流通できない規格外の商品(サイズが小さい、形が不ぞろい等)
③産直の方が値段が良い(価格を自分でつけられるため)
④産直が近くにあるので、販路の一つとして(その他販路の値段が下落したり、停止した場合のリスクヘッジ)
⑤市場を利用したくない(値段が様々な理由で変動するから)
⑥比較的自由に自分が生産した作物を出荷できる(供給過多だから出荷しないでくれと言われることはない等)
産直とは(生産者サイド)
上記のような理由から、生産者にとって産直はそれぞれ上手に活用されているように感じています。
●メインの販売サイトとして
●市場出荷できない時のサブ的な販路として
●その他との出荷と並行して販売できる販路として
私たちは市場、産直、そしてWEBを通しての直接販売、この3つを並行して利用することで、収穫した作物を「味が美味しい旬の時期」に出し切れるように工夫しています。とはいえ、どうしてもロスは生まれるわけで、廃棄になる作物もままあります。(これは毎年の課題…)
産直とは、まとめ
以上、消費者サイド、経営者サイド、生産者サイドと産直を利用している3つの立場から、産直の役割をまとめてみました。上記のように利用する人の立場によって、産直の役割は異なっていますが、いわゆる地産地消、Farm to tableが気軽にできる場としての役割を担っているんだなあと感じています。地元の産直を利用して食材を揃えているレストランもあります。私たちは、その季節毎に出る野菜を産直を通して知って、宿で出す料理や家庭に旬を取り入れています。お馴染みの生産者さんができたりとか、そういうのも楽しいですよ。産直が身近にあることによって、生産者とより身近につながれているようにも感じます。そういうのも産直の大きな役割であると思います。
もちろん、産直を生産者として利用する立場からしたら、頭を抱えることもあります。
現在、あおとくるが利用している産直は?
主に利用しているのは、
●隣の市に昨年オープンしたばかりの大型産直
●全国規模のネットワークを持つ産直
この2つです。勝浦町内にも産直があるのですが、みかんの生産地だけあって、競合が多く、低価格の中での価格競争になってしまっているので、現在は出荷していません。
全国規模のネットワークを持つ産直には、競合がおらず価格競争が発生しない、すだちのみを出荷しています。こちらは各都道府県にある産直への出荷のため、袋詰めをして段ボールに入れ、郵送での出荷を行っています。(商品ラベルは各店舗が貼ってくれます。)
産直の落とし穴
同じ作物がたくさん並ぶと、どうしても価格競争が生まれます。もちろん、高く高くではなく低く低く。もともと産直は価格帯が安めなので、どうしても最低価格の値段にひっぱられがちとなります。市場に出荷できないB級品が出荷されていたり、ご高齢の方々が低価格で出品しがちなためです。(これは全国的に割と問題視されています。)
もちろん価格が安いことは、消費者としては嬉しいことなんですけど!(ほんとうそう!)
でも生産者としては手間暇かけて1年を通して栽培した柑橘(肥料や農薬代もかかる)、資材を購入して袋詰めして、ガソリン消費して車で出荷しに行って、という最低限かかるコスト+利益(持続的に経営、生活するため)と考えると、適正価格で販売したいという思いがあります。
産直に出荷するようになって初めのうちは、同じ作物の、すでに陳列されている商品の値段を参考にし、価格帯を合わせて販売していました。そうして価格帯を合わせると、「採算取れるの?」レベルの低価格になるので、今では自分たちが適正であると判断した値段で販売しています。
よく出荷する時におばあちゃん方から「ねえちゃん、何だしよんで?安いとうちのが売れんけん、困るんだけんど。」と言われるので(明らかにおばあちゃんの方が値段安いんだけど)「うちのはね、高いんで大丈夫ですよ!」とニコッと笑えるようになりました。もうね、定期的に違う方から聞かれるの…。
おそらく話しかけられるのは、ご高齢の方々があまりチャレンジできないような、イラレでデザインしてラミネートしたPOPを設置したり、作物の種類が書いてある分かりやすく目立つカラーのラベルを貼っているからだと思うんですね。値段はおばあちゃん方と比べると平均2~3割ほど高いです。
それなのに、売れます。やはり、
●POPがある(POPなしに比べて売上が格段に違いました)
●作物毎に何の作物か分かるラベルを貼っている(例えば甘夏だと品種毎に味がことなるのに「甘夏」しか書いていない値札ラベルしか貼られていない)
●袋の入れ方を工夫したり、麻ひもで結わく等演出している
このように魅せ方を工夫することで、お客さんの手に取ってもらえています。また、特に甘夏の場合は、品種を書いている方がいらっしゃらなかったので、競合がいなかった。そして産直の購買者層の年齢が高く、甘夏に需要があったというのも1つの要因です。
というのも、一方でチャンドラポメロは産直での動きは鈍く、WEB販売の方が断トツで反応がありました。
私たちはWEBでも並行して販売しているのですが、どうしても甘夏だけは競合過多のため、全く動きなかったので、産直で全て完売することができて本当にホッとしています。万一実が余ってしまった場合は、銭湯さんの代わり湯で使ってもらったり、
ビールの香りづけに使ってもらったり、
それでも旅立てない分は家族や友達にあげまくるか、ニワトリたちにあげるかなのですが、それでも限界はあります。なので、完売して本当に良かった…!!!!
産直問題は後々オンラインにも…
低価格であることはもちろん消費者にとっては嬉しいけれど、生産者や経営者にとって良いことなのか、という側面から考えると、必ずしも喜ばしいことではないんですよね。生産者が持続可能な生産活動を続けてゆくためには、安易な低価格至上主義から、徐々に脱却して、適正価格が増えていったらいいなと願うばかりです。(適正価格って言っても安い商品の2~3割くらい高いってだけだよ。100円だったら120円~130円だよ)
というのも、この産直低価格問題はオンラインマルシェにも波及する可能性があるからです。
COVID-19の非常事態宣言が続く中、県によっては道の駅に併設されている産直も休業。売り先を失った生産者の方々が自ら、またはご家族の手助けでオンラインマルシェに参入してきています。もちろん、価格は産直と同じ。となると、今後オンラインでも価格競争が始まり、参加している生産者は今まで以上にオンライン上で工夫をしていかなければなりません。そうなると生産者の負担ばかりが増えてきてしまうのではないか、と懸念しています。日中、全身を使った作業が終わった後でのオンライン作業はかなり負担となります。私たちも収穫や出荷中は日中に作業する時間が取れないので、事前にできることは済ませておいたり、それでも夜遅くまで作業することもあります。翌日はまた早朝から作業です。これが毎日となると、なかなか厳しいものがあります。
一方で、どうしてもオンラインマルシェは、有機栽培や栽培期間中農薬不使用でなければ、という風潮があります。しかし今後、様々な生産者が参入することで、慣行栽培のものもあるし、有機栽培のものも、もちろんあるという世界が生まれる可能性も感じています。
慣行栽培は悪、農薬は悪、という風潮がまだまだ高いオンラインマルシェの世界ですが、慣行栽培(いわゆるスーパーに普通に並んでいるほとんどの青果物)で使用している農薬や化学肥料について各地域や品種によって規制があり、その範囲内で安全性が証明されています。生産者はそのことを踏まえ、私たちのように規定の農薬回数や量を減らして栽培したり、こだわりの有機肥料を使ったりして、いわゆる慣行栽培だけれど工夫して、こだわって栽培を行っている生産者がほとんどだと思います。
そういった慣行栽培の作物も選んでもらえる可能性が広がることは良いのかな、と思う一方で、栽培方法ではなく、生産者自体がコンテンツとして重視されていく未来が来るのではないかと思っています。というのも、WEBで私たちの作物を購入してくれる多くの方が、私たちの友達や知り合いであったり、私たちを知っていて、私たちが栽培しているみかんだから購入してくれた方や、私たちのSNSを通して活動を見て、購入してくれている方が大半だからです。そして、その方たちのほとんどが毎年リピートしてくれています。
作物は真面目に栽培しなければ、販売できるものはできません。生産者にとって、基本的なことです。今まではそれに個性や強みを見せるために、栽培方法を付加価値として魅せることが購入するかどうかの判断基準となっていましたが、作っている生産者はどんな人で、どういう活動をしているか、というところが、生産者と消費者がより身近につながってきた今、まさに重視され始めていて、購入するか否かの判断要因の1つになってきているのではないかと思い、身が引き締まる思いです。
そしてもちろん、産直が休業したみたいに市場が閉まるということもあるかもしれないし、需要が少なくなって値がとんでもなく下落する等、いつ何が起こるか分かりません。だからこそ、経営を持続し、作物を作り続け、消費者に届けるために、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解した上で、これからも産直・WEB・市場という複数の販路を大切にしていきたいと思っています。